はてなのエンジニアのバリューズ

CTO の id:motemen です。この記事は、はてなエンジニアアドベントカレンダー2018の25日目の記事です。昨日は id:alpicola の『横断検索で社内情報共有を加速させる』でした。

はてなのエンジニア組織にはチーフエンジニアという役割のエンジニアがいて、評価や採用、その他大小諸々の施策を通じて、技術部門全体の生産性と幸福度を向上させるのがその仕事です。今年の夏からチーフエンジニアに新たに id:shiba_yu36 を加え、それがはてなの技術組織についてあらためて考えてみる機会となりました。

はてなで働くエンジニアの数も今やゆうに50名を超え、その増加もこれまでにない勢いです(積極採用中です!)。私が入社した頃には少なからず同質的だったエンジニアのタイプも、当然のことながら、多様性が増してきていると感じます。また、試験的に運用していた組織サーベイの結果を見てみると、会社の事業やミッションへの共感は高いものの、日々の成長感や挑戦に課題があるということもわかっていました。

もともとは暗黙的に共有されていた(という前提の)はてなのエンジニアの持つべき価値観や志向というものが所与のものではなくなったいま、エンジニアの方向づけをし、ミッションと日々の仕事をつなぐものとしての方向性を、一度明文化することにしました。

全社でみると、はてなは「『知る』『つながる』『表現する』で新しい体験を提供し、人の生活を豊かにする」というミッションに向かって事業を営んでおり、日々の行動指針としては、はてなバリューズとして、以下のようなものを定めています。

  • 技術が好き
  • 挑戦が好き
  • 笑顔が好き
  • はてなが好き
  • インターネットが大好き

インターネット、大好きですね。チーフエンジニアで顔をつき合わせて、このバリューズのエンジニア版をこしらえる、という合宿を初夏の一日におこなったのでした。はてなのエンジニアがいまそなえていて、これからも持っていてほしいとぼくが思っているよさを洗い出し、分類して、4つにまとめ上げました。

  • プロダクト志向
  • コラボレーション
  • おもしろさ
  • 学びとオープンネス

f:id:motemen:20181225130909j:plain

プロダクト志向

わたしたちは、自分たちの作っているプロダクトとそのユーザ、それが実現するビジョンに誇りをもって取り組んでいます。高品質なプロダクトを通じてユーザやコミュニティの幸福を実現するために技術を磨き、選択していきます。

プロダクト志向っていうのは、その先のユーザのことを第一において考えるっていうことでもあります。はてなのサービスは、コミュニティに支えられ、またそれを支えるものとして、長続きするものが多いのですが、継続することの価値やその困難さを見すえて、ユーザやプロダクトのために技術を選択していこう、という話です。 ここはまさに苦労している話で、ひとつのサービスを支える技術スタックが、まさにその技術によってチームを分断してしまうという、いわゆる DevOps 的な問題がはてなでも顕在化していて、今「プロダクトオーナーシップ」を合言葉に、社内の体制を変革させているところです。このへんの話はまた後日、共有できると思います。

コラボレーション

わたしたちは、プロフェッショナルの集まりとして、多様性を持ちつつ、同じミッションにむかって共に働いています。エンジニアどうしだけでなく、それ以外の職能をもつ人々にもリスペクトをもち、互いを高めあうことで、チームとして独りでは出せないアウトプットを出してきます。

3年前に書いたエントリでいうところの「越境」です。はてなのメンバーというのは、エンジニアに限らず、上に書いたようなバリューズを共有しているひとたちばかりで、みんながそれぞれにインターネットにいいことをしようという気持ちを持っていることに気づき、その思いをチームとして、組織として現実のものに変えていくためにエンジニアリングをやっていこうよ、という思いです。

おもしろさ

わたしたちは、自分たちの、またユーザのもつ好奇心や創造力に向きあっていきます。新しい体験を生みだす原動力としての「おもしろさ」を大切にし、日々の挑戦を通じて革新を目指していきます。

バリューズを言語化していくと、どうしても真面目なほうに偏ってしまうこともあり、このように少しやわらかい言葉も入れています(最初の案は「おもしろ」でした)。「知る」「つながる」「表現する」もいいミッションですが、もともとの、はてなという会社のおこりと発展を考えてみると、はてなというプラットフォームの上でユーザどうしが発揮する好奇心とか、想像力とかを素直に楽しんでいたところに原点があると思っています。それにエンジニアは刺激されてきたし、その逆に、エンジニアのほうから新しいものを提供することが、楽しみのひとつでもあると思います。エンジニアが感じる「おもしろさ」が、ぼくたちの生み出すべき革新につながっていくと考えています。

学びとオープンネス

わたしたちは、これらの価値観を支えるものとして、学び続けることと、知見や思考を外部に共有していく姿勢を大事にしてきました。新しい技術を学びつつも基礎をおろそかにせずに自分たちの力とし、オープンな態度とフィードバックを通じて成長しつづけていきます。

これは上記「プロダクト志向」「コラボレーション」「おもしろさ」を支えるもの、というふうに捉えています。はてなではエンジニアに社内外にかかわらずアウトプットを推奨していますが、学び続けることと、その過程で得たことをピュアともいえる態度でオープンにし続けることが、はてなと、はてなのエンジニアを成長させてきたと思っているので、大切にしていきたい価値観です。

つごう、バリューズは以下のような関係をもっている、と議論の中でお絵かきをしました。

f:id:motemen:20181225130931j:plain

これらをどう適用していったか?

コンセプトとして掲げていったものがはてなにおける日々に浸透していかなくては意味がないので、その実装として、種々の制度にこれらを反映していきました。具体的には、はてなのエンジニアの人事評価や採用評価の軸を、これに基づいて引きなおしました。

もともと暗黙的に持っていた価値観を具体化したのが人事・採用評価の軸だったので、再定義にあたって心理的な苦労はそれほどなかったように思います。また、このタイミングで「アプリケーションエンジニア」「SRE」「CRE」で3つに分かれていたエンジニアの評価軸を、細かい description の違いは残しつつ、ラベルとしては同一のものにしました。

エンジニアの評価軸の切り替えに関しては、まだ評価サイクルがひと周りしていないのでなんとも言えないのですが、採用に関しては「現場のカン」で進めがちだったヒアリング項目を整理し、いわゆる構造化面接への第一歩を踏み出せたと思っています。この話はもうすこし整理できたら、また共有するつもりです。

そういうわけで、2018 年も終わりに近づいています。また 2019 年もよろしくお願いいたします。