この記事は Engineering Manager Advent Calendar 2022 の 6 日目の記事です。
昨日は @hiraiva さんによる reactiveに業務をしながらproactiveに動くこと、持つべき視座について(別名:EM忙殺問題) - Qiita でした。
自己紹介
id:onk です。株式会社はてなでエンジニアリングマネージャーをやっています。おそらく EM of EMs と想像して貰うのが一番近いと思う。
エンジニアメンター制度とよくある悩み
はてなには、エンジニアメンター制度があります。
はてなのチーム横断のエンジニアメンター制度 - Hatena Developer Blog
- 新卒・中途、入社年数の長さに関わらず、全てのエンジニアには、必ずメンターが一人付く
- 基本的にはチーム外のシニアエンジニアと呼ばれる人たちがメンターとなる
- シニアエンジニアについては はてなの技術組織2016 - Hatena Developer Blog も参照
- メンターは、目標設定・毎月の1on1・評価を通じて、メンティーの悩みの早期発見・解決、成長支援をおこなう
- またメンターは評価時期に、「専門スキル」という観点でメンティーの評価を行う
以前はこのように説明しましたが、その後アップデートがあり、メンターはチーム内で固める方向に変えました。
メンター制度のよくある悩みとして、
- メンターを同チームにするか他チームにするか
- メンター役が居なくて編成が大変
が挙げられるんじゃないでしょうか。
そこで、私のチームで導入した「ローテ 1on1」という仕組みをご紹介します。
話の前提
こういう組織体制でした。
+-------------------------------+ | id:onk (EM) | | +---------+ +---------+ +---- | | | Aチーム | | Bチーム | | ... | | | (3名) | | (3名) | | | | +---------+ +---------+ +---- | +-------------------------------+
- A チームと B チームは別プロダクト
- id:onk は他にもメンティーを持っており、全員と 1on1 をやるのは大変
- ピラミッド化したい!
- A, B チームともにメンター経験者不在
- ちょうど異動が重なった
- 3 人チームだといわゆる TL ロールの人が 1on1 をやることになりがちだが、普段と違う帽子で会話をするのは難易度が高い
- 持っている情報がメンティーと同じで、日常との差が無さすぎる
という状況で、さてどうしようと考えていたときに id:k-murakami0609 が提案してくれたのがローテ 1on1 です。
ローテ 1on1 とは
各チームの TL および EM で、ローテーションしながら 1on1 を行います。メンティーから見ると、隔週で違うメンターと話すスケジュール。それぞれのメンターが 6 週おきの繰り返し予定を作っています。
1on1 の議事録はメンター間で共有していて、メンター 3 人で 1on1 内容を共有する会を隔週で設け、各メンティー情報を読み合わせるとともに、最近のチーム状況や未来について会話しました。
メンターを同チームにすると隣のチームの状況を窺い知る機会が失われるんだけど、ローテすれば定期的に外の目線を持った人と会話する機会を提供できる。また、メンター初心者としては影響や責任が 1/3 になり、他人の 1on1 議事録を読んで勉強できる、といった辺りが狙っていた効果でした。
2022 年 2 月に導入したので、今は開始してから 10 ヶ月ぐらいです。
みんなの声
この記事を書くにあたり、みんなにアンケートを採ったので、これを見て貰うのが一番だと思う。
- チーム内のエンジニア、チーム外のエンジニア、チームを横断的に見ているEMとの会話がローテであったので、メンターによって相談の角度が違ってくるのが会話していてよかった。特にチーム外のエンジニアとはサブ会とかでなければ、しゃべる機会があまり無いので定期的に会話できたのがよかった
- 同じメンターとの1on1だとマンネリ化しそうなところを、ローテで会話することで毎回新鮮な感じで会話できたのがよかった
- ローテ1on1は自分がテックリードを目指すタイミングで開始されましたが、自チームのTL、隣チームのTL、EMと定期的に色んなトピックについて会話できてとても参考になりました。直近実装している機能からもっと大きな技術ロードマップやメンバーの成長など話題はさまざまでした。テックリードに限らず、幅広い視野を必要とするポジションの場合色んな人の話を聞けるというのは良いことなのかなと思いました。
- 毎回相手が変わるので話題が違ったり視点が異なるので新鮮
- チーム内外のコミュニケーションの一つが増えたのでよかった
- 様々な人と 1on1 できる機会というのが純粋に貴重でよい
- 価値観・目線・関わっているプロダクトなどが異なるので新鮮な考え方に触れられる
- それぞれ異なる得意分野や思想を持っているので見識のいいとこ取りができる
- この人にはソフトウェアアーキテクチャについて聞いてみたい、この人には開発プロセス周りについて聞いてみたいといった感じ
- メンターをやっていると週1で毎回違うメンバーと1on1することになり、会社や世間の最新情報を得られる(自分でキャッチアップできていない領域についても)
- メンターになると他メンバーの成長をより身近に感じられる。単純に勉強になるし、チームビルディングの役にも立つ
- チームの組織構造を漸進的に変化させやすくなったように感じる。ディレクション担当(シニア)と現場担当(TL)と役割が分かれて回しやすくなった?
- ローテ1on1の新米メンター側としては気楽(心理的安全性が高い?)。
- メンター初めてだったので、メンティーの成長に寄与できなかったらどうしようと思っていたが、ローテなので最終的にonkさんがなんとかしてくれるだろうって思って気楽に実施できた
- 他のローテメンターの考えを聞くことができる
- 1on1は性質上、閉じられた場で行われるし対象となる人も違うので、メンターとしてのやり方を仕入れたり、アップデートするのが難しい
- が、ローテだと他のメンターの行動や発言を参考に、自分の考えを修正できたりするのでありがたいなと思っている
- ローテしないときに比べて、メンティーに多くのものをフィードバックできている気はしている
- 普段から、メンターは同じチームの人が良いか、別のチームの人が良いかについては悩んでおり、いいとこ取りできたのかな?と思っている
- 成長とか課題解決については、同じ業務をやっているから話せることもあるし、外から見ることで気づくこともある(リモート下で他のチームの状況を知るいい機会にもなる)
- 今回は同じチーム + 別のチーム + EM みたいな構成だったのでバラエティー豊かで良かったんじゃないか
- ローテ1on1のメンティーとしては面白かった
- TL <-> TL, TL <-> EMだったので、同じような立場としてこれ困ってますよねーとかそういう話と、経験豊富なEMからのアドバイスだったり、ヘルプをお願いしたいことを頼めたりしたので、お得だった
嘘みたいに狙い通りのコメントが並んでいてビックリする。
逆に悪かった点としては、
- 同じメンターと会話する頻度がローテ1on1だと減ってしまう
- チームメンバーとだとチームについての話題がメインになってしまう
- 悪いことばかりではないけど、1on1で話すのなら普段とは少し離れた話題は違う視点で会話できるとよさそう
- 評価者との1on1が少ないので、すぐに評価面談のタイミングが来てしまう
が寄せられました。
まとめ
ローテ 1on1 は、コミュニケーション機会とマネージャ育成を両取りしつつ、僕の負荷も下がるという、1 つのアイディアで 3 つの問題を解決できている仕組みでした。今後も継続するかは分かりませんが、当時の状況には完全にフィットしていたと思います。
サイロ化や、メンター役の不在で悩んでいるチームで、ぜひ検討してみてください。