こんにちは、CTOの id:motemenです。
Hatena Developer Blogの連載企画「卒業生訪問インタビュー」では、創業からはてなの開発に関わってきた取締役の id:onishi、CTOの id:motemen、エンジニアリングマネージャーの id:onkが、いま会いたい元はてなスタッフを訪問してお話を伺っていきます。
id:motemenが担当する第5回のゲストは、2021年6月に二宮企画株式会社、2022年11月にHearable株式会社を設立し、Webサービス開発に関する企画やコンサルティングを営む id:nmyさんこと、二宮鉄平さんです。
株式会社プロハウスでチーフデザイナーとして活躍後、ヤフー株式会社に転職。ディレクターとしての経験を積み、2007年5月にはてな初のディレクター職として入社。2008年には任天堂株式会社とのプロジェクトである「うごメモシアター」「うごメモはてな」の開発をリード。その後も自社サービスおよび共同開発サービスにおいて、主にディレクターとして新規事業の立ち上げを担当し、11の新サービス・アプリをリリースするなどのご活躍をいただきました。
はてなの初期から数々のサービスに関わってこられた id:nmyさんに、はてなでの新規事業立ち上げ経験を活かした新規事業の近況やサービス作り、はてなの事業に対する方向性や特異性など、いろいろお話を伺いました。
二宮鉄平さん(id:nmy)
二宮企画株式会社 代表取締役 / Hearable株式会社 代表取締役
2007年-2021年 はてな在籍
はてなの大きな転機にもなった、任天堂株式会社との「うごメモシアター」「うごメモはてな」
id:motemen(以下「」) 今回のゲストは、社会人人生最初の上司としてお世話になったnmyさんです。よろしくお願いします。
id:nmy(以下「」)よろしくお願いします。
まずは、僕が2006年くらいにアルバイトで入った頃に一緒にやっていた「うごメモシアター」「うごメモはてな」の思い出話をしたいです。その頃、nmyさんははてなの新サービスを立ち上げてましたよね。
- 「うごメモシアター」
- ニンテンドーDSiの無料ソフト、ニンテンドーDSiウェア「うごくメモ帳」で描かれた作品をニンテンドーDSiよりインターネットを介して投稿、一覧できるサービス。
- 「うごメモはてな」
- ニンテンドーDSiの無料ソフト、ニンテンドーDSiウェア「うごくメモ帳」で描かれた作品をパソコンやケータイから閲覧できる動画サービス。
※「うごメモシアター」「うごメモはてな」は、2013年5月31日にサービスを終了しています。
www.nintendo.co.jp
そうですね。最初は「はてなハイク」と「はてなワールド」。「はてなキーワード」も一緒にやりましたよね。
当時のはてなにとって、任天堂さんと一緒に開発するというのは、かなり新しい取り組みだったと思うんですよね。創業間もないころは企業さんから開発の受託をお請けしたことがあったと聞いていますが、それ以降、はてなは自社サービスの開発と運営だけで事業を運営したので。
任天堂さんとのご縁で始めたプロジェクトでしたけど、最初は開発の受託案件をはてながやるなんて、全く考えてなかったと思います。
社長が訊く『ニンテンドーDSi』 うごくメモ帳 篇 では、はてな創業者のid:jkondoとid:nmy も参加したインタビューが掲載されています。
https://www.nintendo.co.jp/ds/interview/dsi/vol5
すごく不思議な始まり方ですよね。「うごメモはてな」をやり始めたことが、自社サービスだけじゃなくて、他の会社さんと一緒にサービス開発をするというビジネス(はてなの「テクノロジーソリューションサービス」)のきっかけになりました。
あの頃は他社さんと組むことに関して、nmyさんはどのように考えていたのですか?
何か一緒に面白いことやりましょうという感じで始まったので、受託で開発を請け負ったという意識はなかったですね。特に「うごメモはてな」の場合、任天堂さんの「うごくメモ帳」に紐づく「うごメモシアター」と「うごメモはてな」は、はてなが開発・運営するサービスでしたので。
当時も協業事業と言ってましたし、受託という意識ではなかったですよね。
任天堂株式会社 2008年12月18日 ニュースリリース:「株式会社はてな」との協業事業について
https://www.nintendo.co.jp/corporate/release/2008/081218.html
開発チーム全員が自分たちのサービスだという意識を持てていたのがすごく良かったと思います。
その後も、はてなではいろいろな会社さんといろいろなサービスを作りましたけど、振り返ると共同開発のサービスであっても、みんながいつも自社サービスと同じ意識で作っていた。最初である任天堂さんとの「うごメモはてな」での経験や意識が、ずっと受け継がれていったんじゃないかと感じています。
最初の始まり方が受託という形じゃなくて、自分たちのサービスを他の会社さんと一緒にやるというスタートでプロダクトを作れたことが良い経験となったというわけですね。
僕もエンジニア向けにはてながどんな会社か説明するときに、「ドッグフーディング」って言葉を使うんです。自分たちがユーザーでありうるサービス、自分たちがファンになるようなサービスを作ることは、今でもずっとやり続けている。それは共同開発でも自社サービス開発でも変わりません。
当時の「うごメモはてな」のユーザーは、当時のはてなのサービスのユーザーとは全く違う層だったことも新たな変化の1つでしたよね。
日本国内のユーザーの中心は小中学生でしたからね。告知の書き方ひとつでも、その世代に向けて考えるのは新鮮でした。
世代もそうですが、世界のユーザーにも使ってもらえるサービスが作れる経験って、なかなかできないですよね。北米、欧州、世界中のユーザーが使ってくれたし、夢中になって楽しんでくれたユーザーもたくさんいた。海外であんなに使ってもらえたサービスを作ったのは、僕の人生でも「うごメモはてな」ぐらいしかない。そういう意味でも本当によかったなと思います。
「小中学生の時にうごメモはてなをやってました」という世代が、最近はてなにエンジニアとして入社したり、インターンに来てくれたりしていて、それもすごく嬉しいんです。
「うごメモはてな」はリリースが2008年だったので、ちょうど15年前ですね。サービスは終了しましたが、今でも「いいサービスだった」と言ってもらえるものを作れたことは、すごく良い経験でした。
新サービスを開発することの面白さとメリット
nmyさんは、「うごメモはてな」の後も新サービスをどんどんリリースしていましたね。
「うごメモはてな」の後は、自社開発の新サービスを模索しても、全然うまくいかないという時期がしばらく続いたんです。「はてなランド」「はてなOne」「はてなアルバム」「はてなスペース」... リリースしただけでも4つありますし、なかなかうまくいかなかった面もありますが、次のチャンスとなるものをひたすら任せてもらえたのは嬉しかったですね。
当時は社内に「新サービスを作っていくぞ!」という勢いもありましたよね。
やっぱり開発合宿の影響が大きいと思いますね。定期的に開発合宿を企画して、そこで何かしら新しいサービス作ろうとか、みんなでアイディアを出そうという文化がありました。
最近は「とりあえず新しいアイデアで何かサービスを作ってみよう」みたいなことを目的にした開発合宿は企画されづらくなっています。
それは、はてなだけではなく、世間一般的にも「とりあえず作って、ユーザーつけば何とかなるでしょ」という昔のWebサービスの成功パターンが通用しなくなってきていることが大きいですよね。ユーザーを集めても、ビジネスとして継続可能なものにするのは難しい。昔のように「個人ユーザー向けに何かWebで面白いものを作って出して、使ってもらえばいい」という時代から、ビジネスも一緒に設計しないといけない時代になりました。
スマートフォンシフトの影響も大きいですね。リッチなUIのアプリが当たり前になる中で、Webブラウザメインでバッと作って出してという戦略は難しい。
はてなもそのなかで自社サービス開発から共同開発やソリューション提供のビジネスが大きく成長してきています。nmyさんは、自社サービス開発にいくつか取り組まれたあと、出版社さんとの共同開発のプロジェクトが続きましたね。
共同開発で新サービスを考えるのは自分にすごく合っていたなって思います。集英社さんとはマンガ投稿サービスの「ジャンプルーキー!」を一緒に開発しました。そのあとは、KADOKAWAさんと「カクヨム」の開発プロジェクトを担当しました。これまでの経験で、はてなの良さを活かしながら、苦手な部分を補い合えるスキームをうまく見つけられていたので、どちらの開発もうまく進めることができたと思っています。
リーン開発手法やアジャイル、MVP開発などは、いまでこそ一般的にも確立されてきましたが、2008年当時はまだそんなに浸透していなかったですよね。だからこそ、共同開発のプロジェクトで提案すると、とても喜ばれた記憶があります。
「うごメモはてな」のときも、話をもらった日の週末にプロトタイプを作って、翌週の打ち合わせに「もう動きます」って持ってったじゃないですか。当時は人数も少ないし、いまみたいな勤怠管理もされてなかったので、みんなでワイワイ土日も気にせず開発して、「できました!」みたいに持って行って驚いてもらうのが嬉しかったり。言われたことをそのまんまやるんじゃなくって、もっとこうがいいと思いますと作ったものを提案したり。そういうやり方が大きな会社ではなかなか出せないスピード感だったり自由さを補ったというか、ぴたっとはまった部分があったのだと思います。
逆にはてなの欠点をパートナーとなる企業さんが補ってくれる点はどこだと考えてらっしゃいましたか?
はてなは、開発に対しては非常に強みがありますが、当時はマーケティングや営業など、戦略的に外に広める部分は弱かったと思うんです。例えば、任天堂さんとの協業で海外のユーザーにも使ってもらえるとか、集英社さんのジャンプというブランドで一緒にやらせてもらえるとか、KADOKAWAさんと小説書く人たちにリーチできるなど。開発は強いけど、もともとはてなを使ってくださっているユーザーさん以外に広げていくようなマーケティングが得意じゃなかったので、そうそう不得意な部分がパートナー企業さんによって補われることが多いと思います。
自社開発の新サービスが全然うまくいかなくて、落ち込んじゃって、「もう新サービスはしんどい」って感じだったのに、集英社さんから「ジャンプルーキー!」のお話が来たときには面白そうと思って、「やります」って即答しちゃった(笑)。自信を失っていた僕にまたチャンスが巡ってきて、お客さんと一緒にいろいろなサービス作れたことは、個人的にもすごくありがたかったです。
「これ、なんか面白そう」って思えるのが、プランナーとしてのnmyさんらしさですね。
新サービスを作っているときは、いつも「しんどい」「もうやりたくない」ってずっと言ってるんですよ。でも、リリースすると全部忘れて、また新しいことしたいって言い出すというね。新しいものを頑張って提案しても否定されるつらさはあるんですけど、逆に「これいいですね」とか「面白いですね」って言われると、めっちゃ嬉しいんですよね。それが忘れられなくて、また新しいものを作りたくなっちゃうんです。
会社に所属していたときと、個人として仕事することの違い
nmyさんが2021年にはてなを卒業して、独立してからのお話を聞かせてください。
はてなを卒業する2年ぐらい前に、家族の介護で地元の福岡に引っ越しました。当時のはてなは、いまのようにフルリモートではなかったですが、当時から家庭の事情などがある場合はリモートワークを認めていくれていたので、僕もそれで福岡からのリモートワークで働いていました。京都のはてなという会社に所属して、福岡から、KADOKAWAさんや集英社さんといった東京の会社のみなさんと、同じ一つの目標や目的のために一緒にサービスを作っている。これって、面白いなって思ったんです。
自分は新サービス狂というか、自社サービス作って、喜んでもらえたら嬉しいというタイプだと思っていたけど、振り返ってみると、いろいろな会社の人たちといろんなプロジェクトやることが楽しかったんですね。そこで、もっといろいろな会社の人と、いろんなものを作りたいと思うようになって、独立を決めました。
独立して立ち上げた二宮企画という会社では、どのような事業をされているんですか。
基本は企画やコンサルティングの仕事を請け負っています。特に新規事業やりたいとか、大きく会社の方向性変えたいからリニューアルしたいというお客さんとは、一緒にプロジェクトを立ち上げて仕事しています。
新しいものを作る場合は、最初にリサーチすることを提案して、リサーチの設計からインタビュー、リサーチ結果の分析もやったりします。実際に開発する場合は、開発会社を選定して進捗の調整やUI設計なども行いますね。
会社に所属して仕事することと、個人として請け負うことの違いについて伺いたいです。
最近、「昔はめちゃくちゃ人のせいにしていたな」って思うんです。特に、はてな時代はひどかったなって思い返すことが多いですね。例えば、お客さんに新サービスを提案して通らなかったら「お客さんが見る目がないからだ!」って、思ったこともありました(笑)
社内で企画の提案をして通らなかった時も、「経営陣がわかってくれないからだ!」と、人のせいにしていました。プロダクトや企画に対するこだわりよりも、本当はどうやったらうまく行くか、企画が通るかを考えることが大切なんですよね。
独立するともう何の言い訳もできないし、全てが自分に返ってくる。今までは、はてなに守っていただいていたのに、そんなこともわからず、ひどいことを言っていたなって思っています(笑)
しんどいと感じることも多いのですが、独立したことで、そういったことに気づけてよかったとも思います。会社を出なければ気づけなかったうえに、45歳で気づくなんて遅いという感じではあるんだけど、でも、死ぬまで気付かないよりはいいですよね。自分が成長できるんだから。
元はてなメンバーと新規事業を立ち上げ
元々はてなでデザイナーをやっていた村田君(id:murata_s)とお金を出し合って、2022年11月にHearable株式会社を設立しました。
二宮企画でお客さんの企画を請け負う仕事で売上は立ってきたのですが、「新サービスをやりたい」という悪いくせが出てきて(笑)。村田君に「新サービスやらない?」って声かけたら、「やるんだったら中途半端じゃなくて、とことんやりましょう!」というマジな返事が返ってきたんです。それで設立したのが、Hearableです。
サービス的にはユーザーリサーチやユーザーインタビュー結果を管理して分析するツールを作っています。はてな時代はユーザーからのフィードバックをたくさんいただいていたし、当たり前のようにそのユーザーの声を聞きながら、開発をしてきました。はてなの外に出てみると、それは当たり前じゃなかったって気づくんです。いろいろな会社とのプロジェクトでリサーチを実施しても、その結果が十分に活かせていないことの方が多い。その課題感をはてな時代の体験をもとにサービスにしようと取り組んでいます。
サービス開発する上で大事だと思ってきたリサーチやユーザーインタビューの活用をお客さんにもやってもらうためのサービスなんですね。
二宮企画の中でやるよりも、スタートアップとして事業を切り出して切り出した方が調達も受けやすいし、事業としても伸ばせるだろうということで、新しい会社を立ち上げることにしました。45歳にもなって無茶していますよね(笑)。
すごいですね。自分もまだまだ頑張らないといけないなと思いました。
エンジニアのメンバーを集めようということになり、元はてなのtくん(id:t_kyt)とninjinkun(id:ninjinkun)、現役はてなスタッフのid:mfzyさんの3人に声をかけました。3人とも本業があるので、副業として空き時間にコード書いてもらって報酬をお支払いするかんじでお願いしています。
村田君も含めて僕以外の全員に共通していることは、はてなに新卒で入社したメンバーだということ。ninjinkunは最初にインターンできたときが同じキーワードチームで、tくんは新卒でマンガチーム、mfzyさんは新卒でノベルチーム。僕はディレクターでした。
僕は非常に内向的な性格なので、一度心を開いた人とは仲良くやれるというところがあるのかもしれないですね。みんな優秀ですし、いろんな提案をしてくれるので、開発はやりやすいです。
自分の意思を伝えつつ、相手の気持ちを読み取るコミュニケーション
僕はnmyさんをずっと見てきたので、ご自分を内向的だと思っているというお話に驚きました。jkondoさんがやられているポッドキャストでもコミュニケーションが苦手とお話されていましたよね。あまりそういう印象を持ったことがなかったので。リーダーとして何か意識されていることや、自然にできていることについてお聞きしたいです。
僕は社会人になるまでは友達も少なくて、わりと孤独な人間だったんです。だから周りの顔色を伺ったりとか、人が怒っている雰囲気を感じ取るのがたぶん得意だと思うんですよね。
リサーチやユーザーインタビューでユーザーの声を聞いたり、お客さんから事業の課題を引き出したり、プロジェクトメンバー同士の雰囲気などを敏感に察知することが得意なタイプなんです。
自分のビジョンや思いを持って、リーダーシップを発揮して旗を振るよりは、みんなが何か困ってそうだとか、ここに課題があるんじゃないかを察知して、解決法を提案する方が性格に合っていると思っています。
でも、僕はnmyさんには「思い」がある人だというイメージがあります。
たしかに自分の考えみたいなのもあるのですが、お客さんのやりたいこととの間を見つけて繋ぐことが得意だったのかもしれないですね。
相手の課題をベースに、nmyさんの思いをオーバーラップしているということですね。nmyさんは社内のグループウェアにもいろんなことを書き残してくださってましたが、全部受動的ではなくて、nmyさんの思いが込められていると思っていました。
そこは意識していました。自分が上司にされて一番嫌なのは、自分の決定ではない通達をされることだからです。「僕がこれはできないと判断した」「僕がこうすべきだと考えた」というように、その人の思いで伝えてもらえるならいいんですけど、「僕はいいと思うんだけど、みんながどうかな」みたいに、自分の意思を伝えないのは嫌なんです。だから、絶対主語を自分にして伝えるように、気をつけていましたね。
いまのはてなはどう見える?
最後に、nmyさんが「今のはてなを外から見て思うこと」を教えてください。
はてなにいた頃はさっきもお話した通り、いろんなことに気づけていなくて、不満があったんです。でも、外に出てみると素晴らしい会社だとわかるようになりました。自分でスタートアップを始めると、はてなのような規模でサービスを提供できるすごさを感じています。
これまではサービスを提供する側にいて、発注する側にいなかったのですが、お客さんと一緒に発注する側の体験もしたことで、はてなの人たちのマインドや技術力が改めて素晴らしかったなと思うことがよくあります。クライアントのサービスを、自社サービスと同じように思って作っている。そのマインドを全開発メンバーが持ってるというのは、全然当たり前のことじゃない。
はてなでは、「これを作ってください」と言われたオーダーに対して、プラスの提案を乗せてくる。絶対何か足してきますよね。エンジニアだって「これはもっとこうした方がいいと思う」って、全員が言ってくる。当時はそれが当たり前というか、むしろちょっと面倒くさいなんて思っていたけど、全員がそんなマインドを持ってる開発チームってなかなかない。素晴らしいなと思います。
逆に言うと、そこが弱みになってるかもしれません。開発力があるから、共同開発だったり、ビューワ提供だったりの事業に関しては、マーケティングや営業活動をしなくても、お客さんが行列に並んでいる状態なので、全然アピールしていない。営業もマーケティングもしないでこれだけ事業伸ばせるんだったら、もっと人を増やして、マーケティングを強化して、お客さんをもっと増やそうよ。もっと成長しましょうよって思いますね。
まさに上場してからは、投資して伸ばすというよりは、売上を伸ばしている受託事業を強化しているところがあります。実際、マンガビューワなどは新規のお問い合わせをいただいてもこれ以上お受けできない状態なので、お客様に向けた営業もマーケティングもしていません。
さっき言ったはてなの強み部分、みんなが自社サービスマインドを持っているのは、自社サービスの開発会社だからこそ。協業や受託に全振りしていると、いつかその良さは失われちゃうんじゃないかとも危惧します。
当たり前のようにリサーチをやって、SEOを考慮して、プロトタイプをさくっと作るという自社サービスマインドがお客さんにハマったのは、そこにシナジーがあったから。自社開発と共同開発の両方あったからよかった。だからこそ、自社サービスは大事にしてほしいですね。
そうじゃないと、いつかは枯れると思うんです。僕はその危機感がすごく強い。二宮企画は、事業の提案とか新サービスの提案とかする会社なのに「なんで自分でやらないんですか」って言われたら答えられない。「そんなに事業成功させられる自信あったら、自分でやればいいんじゃないですか」って言われると返せないんです。
あとは、自分でやってきたことから得た知見の共有も、片方をやめちゃうと枯れてしまう。昔の経験だけで生きていく人間になっちゃうと思ったんですよ。それで二宮企画と別に新サービスを作る会社を創立したんですけど、それってはてなも同じだなと。
なるほど。お客さんにサービスを提供するときに、それが口だけのものじゃなく、自分の実体験に基づいて言える状態にしたかったということなんですね。
今はそうです。あとは、生の開発現場にずっと触れていられるというか。はてなはそもそもそれが良かったと僕は思っているので、真似させていただいています。
はてなは、先ほどnmyさんがおっしゃってくれた面でも、自社サービスを大切にしていると思います。自社サービスに軸足があるという意識がありますし、両方やっていきたいですね。
涙目になるほど、突き刺さったお話をたくさん伺わせていただきました。きょうはありがとうございました!
id:nmyさんこと二宮さん、ご協力ありがとうございました。次回の「はてな卒業生訪問企画」は2023年10月更新予定、担当はid:onkです。
id:motemen
大坪 弘尚(おおつぼ・ひろなお)
CTO(最高技術責任者)兼 サービスプラットフォーム部 部長
2008年、東京大学大学院情報理工学系研究科を中退後、アプリケーションエンジニアとして新卒入社。うごメモはてな、Mackerelなどのサービス開発に携わり、2012年より技術グループ チーフエンジニア、2016年に最高技術責任者に就任。
Twitter: @motemen
GitHub: motemen
blog: 詩と創作・思索のひろば