GMOペパボで活躍中の id:antipop を訪問 | はてな卒業生訪問企画 [#16]

こんにちは、取締役の id:onishi です。

Hatena Developer Blogの連載企画「卒業生訪問インタビュー」では、創業からはてなの開発に関わってきた取締役の id:onishi、CTOの id:motemen、エンジニアリングマネージャーの id:onkが、いま会いたい元はてなスタッフを訪問してお話を伺っていきます。

id:onishi が担当する第16回のゲストは、GMOペパボ株式会社 取締役CTO 兼 CTO室室長 兼 事業開発部部長のid:antipop・あんちぽさんこと、栗林健太郎さんです。

antipopさんは大学卒業後、ご出身地である鹿児島県奄美市の市役所勤務を経て、2008年にはてなにエンジニアとしてご入社いただきました。その後、卒業するまでの4年間は、はてなダイアリーやはてなスターなどのサービスで幅広くご活躍いただきました。2012年に株式会社paperboy&co.(現GMOペパボ株式会社・以下「ペパボ」)にご入社後は、技術基盤整備とサービス開発に従事され、2014年に技術責任者、2015年に執行役員CTO、2017年に取締役CTOに就任されています。

CTO業に加え、ペパボ研究所の所長や事業開発など、さまざまな分野で活躍されているantipopさんに、最近のお取り組みや博士号の取得と学び、子育てについてなど、お話をお伺いしました。

栗林健太郎さん(id:antipop
2008年5月~2012年4月 はてな在籍
X:https://x.com/kentaro
site:https://kentarokuribayashi.com

CTO業務と新規事業への挑戦

id:onishi(以下、id:onishi)卒業生訪問企画と言いつつ、全然訪問できていなかったこの連載ですが、今日はGMOペパボさんにお伺いすることができました。antipopさんとちゃんとお話するのも久しぶりなので楽しみにして来ました。よろしくお願いします 。

id:antipopこと、GMOペパボ 栗林健太郎さん(クッションがあったので「あの画像」を意識して撮影させていただきました


id:antipop(以下、id:antipop)お声がけいただいてありがとうございます。よろしくお願いします 。

id:onishi antipopさんは、ペパボさんにご入社されてもう13年も経つんですね。2015年に執行役員CTOに就任されてから10年、取締役CTOに就任されてからも8年です。ペパボ研究所の所長として研究開発にも携わるなど、幅広くご活躍されていると思いますが、多岐にわたるご活躍の中で、最近特に注力されていることからお聞かせいただけますか ?

id:antipop 取締役CTO・ペパボ研究所所長に加えて、最近は事業開発部の部長をやっていて、新規事業の立ち上げ責任者も務めています 。

id:onishi 事業開発部長のお話、ぜひお伺いしたいと思っていました。以前から個人でずっと趣味開発をされたり、新しい技術についてもずっとインプットされ続けている印象なので、新規事業の立ち上げはすごくしっくりくるなと思っていました。一方で、取締役CTOをやりながらというのは、かなり大変なんじゃないかと。どういった経緯で担当されることになったんですか ?

id:antipop CTO業で言うと、技術組織については技術責任者が担っているので、私はほとんど直接的には関わっていません 。社内には4つほどの事業部があるのですが、それぞれに事業部CTOを置いていて、現場の技術については彼らに任せています 。

GMOペパボのエンジニア組織 (エンジニア組織と制度 - Pepabo Tech Portalより

なので、正直、暇でして(笑)。それで「新規事業をやれ」という話になり、この1年半くらいやっています 。

id:onishi 暇ってことはないと思いますけども(笑)。話が来てからは、すんなり進んだのでしょうか ?

id:antipop 実は、事業系のことをやろうとしたのは今回が初めてではなく、これまでも何度かやってきたんです 。

例えば、ブロックチェーンやAIといった波が来るたびにCTOとして「こういう事業を作りましょう」と話したり、私がサポートする形で事業を作るようなことはちょこちょこやっていました 。その前はセキュリティ事業を立ち上げようと試みたのですが、なかなか思い描いていた形にはいかなかったりとか 。なので、3度目のチャレンジといったところです 。

id:onishi 事業開発部自体が新しく立ち上がったんですか ?

id:antipop そうです。新規事業自体は社内で私たちだけがやっているわけではないんですが、既存の開発チームとは切り離したかたちで、独立してやっています 。既存の事業とは異なる方向性を模索するために、新たに部署を立ち上げた形です。

2023年10月16日「組織の新設および役員の管掌変更等に関するお知らせ」GMOペパボ株式会社

id:onishi ほかの役割とのバランスはいかがですか ?

id:antipop 事業系とCTOの業務も一応合わさっている感じで、はっきり分けてない仕事も多いなと思ってます 。新規事業でも新しい技術を使ってプロダクトを作る側面はありますし、私自身が色々な新しい技術を取り込んで、自分で作ったりもするので 。なので、半分CTO業の流れで事業開発部長もやっているという感覚ですね 。そういう意味では半々くらいでしょうか 。

id:onishi(着用している はてなTシャツ は GMOペパボさんの「SUZURI」で販売中です)

エンジニアと事業責任者の視点の違い

id:onishi そこで立ち上げたのが、「Alive Project byGMOペパボ」と「GMO即レスAI」のふたつですね 。

antipopさんがはてなにいた頃はエンジニアでしたし、ペパボさんに入られてからもエンジニアからキャリアを積まれていますよね 。技術責任者やエンジニアとしてやられていた頃と、事業責任者だと、求められるものもだいぶ変わると思いますが、この1年半、実際にやってみていかがでしたか ?

id:antipop ものをつくること自体はできるのですが、それが売上などの数字に繋がるかというと、非常に大変ですね 。日々それを痛感しながらやっています 。

自分たちでは良いプロダクトを作っていると自信を持ってはいるのですが、それがお客様に思うように響いているかというと、必ずしもそうではありません 。もちろん、私たちがお客さんに届けきれていないということもあるとも思います 。お客様とのマッチ度合いをきちんと作り、数字に繋げていくというところは、やはり大変だなと思いながら過ごしています。技術担当として営業同行したりする機会もあるので、新鮮ではあります 。

id:onishi 僕もエンジニアからディレクター、その後事業責任者になりましたが、エンジニアから事業を見るようになると、だいぶ違いますよね 。

id:antipop そうですね 。作ったら、その機能や客観的な成果が積み上げられるのは良いことだと思いますが、それがお客様に使われるかどうかは様々な事情があるので、良いものを作れば良いというわけではないですよね 。当たり前の話ではありますが、それを実感として理解できるかどうかは、やってみないと分からないなと思いました 。

担当している新規事業と、はてなとペパボの似ているところ

id:onishi VTuberに以前から関心をお持ちだったので、「Alive Project」についてはantipopさんらしいなと思って拝見していました 。

id:antipop ペパボとはてなは似ていて、表現する人を応援するプラットフォームを提供し続けてるじゃないですか 。私はそういうサービスが好きなんですよね 。インターネットで何か表現したいと思ったときにブログを書いていた人やホームページを作っていた当時の若者がいま同じ年齢だったら、VTuberをやったりTikTokをやったりもするんだと思うんです 。そういう意味でやっていることは変わらないんですよね 。そういう自分が楽しいと思うことを続けられているのは嬉しいなと思います。ただし、それをお金にするのは難しいんですけど(笑) 。

id:onishi わかります...(笑) 。

id:antipop もう1個の新規事業はBtoBで、AIを使った企業向けDXのソリューションサービスです 。事業開発部としては、あまり領域にとらわれず、これから売上の柱になりそうなものを探しているんですが、AI×BtoBの領域で考えたもののひとつですね 。はてなもAIで企業向けの「toitta」を新規事業でリリースしていて、ペパボでもすごく話題になってたんですが、その点も似てますね 。

id:onishi 売り上げの柱となるとBtoBの領域で考えていくことになりますよね 。

id:antipop はてなも僕が居た頃とは事業構造が全然変わっていて、売上比率はBtoBがかなり高くなってますよね 。

id:onishi そうですね。antipopさんが卒業した2年後の2014年頃が結構転機で、MackerelもマンガビューワもCMSも同時に出始めたので。そこから10年でそれらが成長していってくれた感じです 。

id:antipop Mackerelなどが出てくるのは「だよね」という感じがするんですが、toittaは「そうきたか!」という感じがしました 。

id:onishi はてなブックマークを開発していたチームが新規事業で作ったのがtoittaで、おかげさまで良いスタートが切れているなと思って見てます。いま僕が見ている本部が管轄なので 。

id:antipop いやー、素晴らしいです。楽しみですね 。

2010年のid:antipopさんと id:onishi

多忙な中での博士号取得

id:onishi そんな忙しいなか、大学院に行かれて博士にもなられてますよね 。

id:antipop 修士課程2年、博士課程3年の5年で博士を取りました 。

id:onishi 会社役員をしながらの社会人博士で、なかなか大変そうだったなと。SNSや日記にも論文執筆について書かれていましたね。すごくパワフルだなと思って拝見してました 。

id:antipop 大変といえば大変ですが、社会人としてのプロジェクト推進能力があればどうにかなるんです 。社会人って、期限までにやらなければいけないことや、クオリティコントロールの仕方を心得ていますよね 。もちろん100点は取れればいいですが、この期限では無理なので、合格点が60点だとしたら65点、ギリギリで取るにはどうしたらいいかというようなのが上手になるじゃないですか 。なので、社会人スキルをフル活用できるので、そういう意味ではそんなに大変ではありませんでしたね 。100点取ろうと思ったら大変だと思いますが、合格点ギリギリ取ればいいという感じなので 。

「社会人」大学院生であることを最大限活用するには?ー博士(情報科学)取得の報告にかえて - ペパボ研究所ブログ

id:onishi 確かに、書かれているものを読むと、すごい計算してバランスを取りながらやられているなと思います 。


id:antipop 完璧にミニマムで、ギリギリを通すという感じになっていますね 。博士後期も、修了はついこの春なので、僕、今、新卒エンジニアなんですよ 。

id:onishi 違うでしょ?(笑)。まあ確かに、新卒入社したわけではないけど、新卒は新卒ですよね 。

id:antipop 新卒エンジニアで何やっても許される時期です(笑) 。

id:onishi そもそも大学院はどういった経緯だったんですか ?

id:antipop やったからといって何かあるわけではないですが、なぜやったのかというと、色々とあってやらなければいけない羽目になったんです 。私は法学部卒なので、研究所の所長としては、野球をやったことがないのに野球の監督をしているような感じでした 。それが小学生の草野球とかなら全然いいんでしょうけど、だんだんチームが伸びてきたら、さすがに監督もちゃんと野球をやった人じゃないと厳しいというレベルになると思って 。「じゃあちょっと僕もバット振るか」みたいな感じですね 。博士の学位を取ると、一応野球の経験がありますというのも最低限得られるので 。博士課程に行くこともできたのですが、挫折したら何もゼロになるので、修士課程に行けば最悪修士は取れるんじゃないかと思って 。まずは修士から始めて、なんとか博士になれました 。

id:onishi すごいなぁ。antipopさんって昔からずっと本を読んでいて、常に勉強し続けているイメージがあります。我々の年齢になってくると勉強し続けるのは大変だと感じる人が多いと思うのですが、antipopさんは変わらずやられていますね 。秘訣のようなものはありますか ?

id:antipop onishiさんが好きなマンガを読むのと同じ感覚じゃないですか?秘訣というよりは、単に習慣的にやっているという感じだと思います 。

id:onishi マンガと一緒かぁ... 。

子育てがもたらす新しい趣味

id:onishi あと、日記を読んでいると、最近はすごい子育てされてる感じがしますね 。

日記 | 栗林健太郎

id:antipop 子育ては楽しいですね 。一気に世界が広がりました 。子どもが興味を持つことによって、自分が子どもの頃に好きだったことを再現したり、あるいは全然関係ないことを新たに学んだりすることがあります 。

id:onishi おもしろいですね 。

id:antipop 再現で言えば、私は図鑑が好きだったので、色々な図鑑を買い与えて一緒に楽しんでます 。子供はまだ2歳なので、本人が「これが欲しい」というわけではないですが 。ある日子供が「メーター」の話をしてきて。いったい何を言ってるんだろうと思ったら、「カーズ」という映画に出てくるキャラクターの名前だったみたいで 。そのとき、自分の子供が自分の知らないことを話し出すことに衝撃を受けたというか 。子供は自分とは違う独立した存在であることは理屈ではわかっていても、どこかで自分の分身のように思えてしまうときもあるじゃないですか 。それが実感を伴って別の人間であることを知った経験でしたね 。それで「ちょっと何かやらないと」と思って、「カーズ」の映画三部作を見たり、一緒にトミカを買いに行ったり 。「カーズ」のトミカって189種類あるんですが、それを全部コンプリートするぞ!って自分が楽しくなってきてます 。

id:onishi わかります。子どもはそんなに望んでないのに、親に収集気質があると、コンプリートできる題材は全部欲しくなりますよね 。

id:antipop そうなんですよ 。これからきっと子供がきっかけでポケモンとかにハマっていくんだと思うんですけど、ポケモン絶対楽しいだろうなって 。ある意味、仕事と一緒ですよね 。強制されているというか、状況に流されて、興味が広がっていく楽しさがある 。

id:onishi 子育ての楽しい部分のひとつですね 。

はてなでのエンジニア時代

id:onishi 仕事からお子さんの話まで、最近のことも聞けたので、昔の話も少ししていきましょうか 。antipopさんは奄美市役所で働かれていたときに、趣味が高じてソフトウェアエンジニアを目指されて、はてなにご入社いただいたわけですが、そのあたりもやっぱり「学び」の話につながるなと感じていて 。コミュニティのなかで楽しみながらプログラミングを学んでいたら、ソフトウェアエンジニアになったという 。

「奄美でひとり、ブログを書いてたら」 東京でCTOになった元・地方公務員の物語 | ビズリーチ

id:antipop たしかに、なにか楽しいことがあって、それを通じて新たな知り合いやコミュニティと出会っていくことで仕事につながっていくのは今も変わってないかもしれない 。奄美の市役所に居たころから、ブログを作ったり、コードを書いたり、はてなダイアリーもベータ版から使っていたり、遊びの延長線上のような感じでネットで遊んでいました 。当時のはてなに居たid:naoya さん(株式会社一休 CTO 伊藤直也氏 @naoya_ito)や id:secondlife さん(舘野祐一氏 @hotchpotch)たちはプログラミングをしてアウトプットしたりOSSを出したりされていたので、それを見ながら、ゆるいつながりができていました 。近くにはプログラミングについて話せる仲間がいなかったので、楽しかったですね 。

id:onishi その延長でソフトウェアエンジニアへの転職があったわけですよね 。なかでも、はてなに入ろうと思ってもらえたのは、やはりnaoyaさんやsecondlifeさんのような、ネットで目立つ人がいたからでしょうか 。

2008年のid:antipopさんと id:motemen(現はてな執行役員CTO)

id:antipop 入社はそうですね 。エンジニアの方々、特にPerlコミュニティでも色々と活動されていた方々には親近感がありました 。はてなが京都に移転するタイミングで、secondlifeさんに「京都に移転してエンジニア募集してるみたいだよ」と言われて、「じゃあ僕も行こう」という感じでした 。憧れの人たちが集う場所でしたから 。

id:onishi 2008年5月入社で、まさに京都オフィス立ち上げのすぐ後でしたね 。オフィス内装を作っている最中で、段ボールで仕事をしているようなところに、スーツ姿のantipopさんが面接に来たのを覚えています(笑) 。

id:antipop なつかしい 。

id:onishi はてなに入ってすぐは、僕と一緒のチームだった時期も含め色々とやりましたね 。モバイル版はてなやキーワード、スパム対策など 。毎週リリースしようと頑張りましたね 。

id:antipop 意地でやっている感じでしたよね 。

id:onishi もともと私一人でやっていて、antipopさんが来てくれても社員が二人だけみたいな状態で 。アルバイトさんが書いたコードを、あの頃は丁寧にレビューせずに勝手に書き換えて出していましたね 。

id:antipop 今みたいなエンジニアリングをちゃんとしている時代ではなかったですもんね 。

id:onishi かなりアジャイルな感じでしたね 。2008年はインターンを始めた年でもあるので、antipopさんと毎週リリースをしながら、学生のインターンを受け入れて、メンターや講義もしたりしながら毎週リリースしていました 。なかでも印象に残っている仕事はありますか ?

id:antipop 色々ありますが、ポータルの国際化は仕事としては大きかったので、規模感という点でも印象に残っていますね 。ポータルの国際化は、RidgeとDBIx::MoCoというフレームワークの置き換えに加えて、国際化とポータル、メッセージの同時リリースで、あらゆる事が1日で起きた思い出です 。

id:onishi 私が印象に残っているのは、ダイアリーにTwitter関連の機能を入れまくったことですね 。あれは内容も良かったし、antipopさんがやりたいことをやってもらえた感じがしてました 。

id:antipop 当時はそんなにみんなTwitterをやっていなくて、僕なんかはTwitter廃人みたいになってて 。「絶対Twitter関連の機能、やりましょう」と言っていましたね 。「またTwitter廃人が言ってるよ」みたいな雰囲気でしたけど(笑) 。でも、やらせてもらって楽しかったですね 。

id:onishi antipopさんと一緒に仕事していて、印象に残っているのは、教育者だったなと思います 。id:shiba_yu36さん(クラスター株式会社 柴崎優季氏 @shibayu36)とかもantipopさんに育てられたような感じじゃないですか 。

id:antipop 長く一緒にやっていましたからね 。

id:onishi 僕はあんまり部下を育てようという意識がなくやっていたにもかかわらず、antipopさんは、アルバイトのみんなをサポートしてくれたり 。

はてなサマーインターンの講義をする id:antipopさん

id:antipop そうですね、onishiさんが忙しかったら僕が面倒見るみたいな感じになっただけじゃないかと思いますけど、結構そういうことありましたね 。shiba_yu36さんもそうですし、他にも何人か思い入れ深い人がいますが、そういった人たちと結構よくやってたなと思いますし、楽しかったですね 。若い人たちは優秀な人もいれば、色々と「おいおい」と思うようなことやうまく話が通じないこともあったので、アサインする側としても頑張ってコミュニケーションしたりしていましたね 。

id:onishi そういう役割を担ってくださっていたのは当時とてもありがたかったです。
はてな時代を振り返るといかがですか ?

id:antipop 私はエンジニアとしては何も知らないではてなに入社しているので 。ベースがはてななんですよね 。技術的なところもそうだし、サービスの開発に向き合う姿勢とか、そういうところも含めて作ってもらったなと思うので 。はてな時代に「これ!」というものを培ったというよりは、すべての入り口という感じです 。ベースがそこにあるなという気はしますね 。

id:onishi 何も知らないで入ってきたという感じはまったくしなかったですけどね。堂々とされていると思ってました 。

id:antipop プロとしてやっていたわけではないじゃないですか 。自分で趣味で作り物を作っていただけなので、入社してからは、雑ではないですが、シンプルに実装したらパフォーマンス上の問題が出て、サービスが落ちるとか、そういうことがあったりして 。そういうのは結構大変でしたね 。そういうパフォーマンスの考え方とか 。今は私はそういうのを見ることはないですが、入ってから結構大きいサービスの開発をやっていたので 。

id:onishi そういうところで色々と意識したり、考え方が冷静になっていくところはありますよね 。antipopさんだけでなく、みんな趣味で何か作っている人が集まっていた時代でもあったので 。naoyaさんも問題にぶつかる中で勉強してスキルを身につけていったし、ソフトウェア工学の専門家みたいな人で言えば、id:stanakaさん(弁護士ドットコム株式会社 執行役員 CTO 田中慎司氏 @stanaka)くらい 。

id:antipop そうそう、stanakaさんといえば思い出すのが、フォトライフかなんかで「この数字を2倍改善しろ」みたいなパフォーマンス改善の指示が出て「はい!」と言ったものの、「どうしたらいいんだろうな...」と思ってたら 。それを見かねたstanakaさんが「この辺が遅いようだね」みたいなことを横でぼそぼそと言ってきてくれて 。それで測ってみたらボトルネックが見つかって、「これ直せばいいんだ!」みたいな 。それで「直しました」と言ったら、「頑張ったね」みたいに言ってくれたことがあったな、と思い出しました 。

いまのはてなはどう見える?

id:onishi 定番の質問ですが。はてなを離れて13年。いまのはてなについての苦言や思うこと、今後のはてなへのアドバイスなど、いただけると嬉しいなと 。

id:antipop 苦言とかは全くなくて、素晴らしいなと思っています 。私が離れてから、会社としては全然違うビジネス構造になってますよね 。非常に素晴らしいなと思っています 。なかなかできないじゃないですか 。はてなはやっぱりもともとのtoC事業のイメージが強いですし 。それをやりながらも、事業構造はガラッと変わって成長しているのはものすごいなと思うし、私たちもそういうことをやらないとなと思っています 。だからといって、はてながつまらない会社になったかというと、そういうことも全くなくて、今もエッジの効いた人がいっぱいいますし、知ってる人が関わっていることも多いので、ずっとそんな感じなのはすごいなと思っています 。個人的にはやっぱり、おもしろいサービスも出してもらえると、より楽しいかなという感じですね 。ペパボでも、それはなかなか難しいことはわかりつつ、やろうとはしているので 。

id:onishi toCのおもしろいサービスですよね 。

id:antipop そうです。表現活動みたいな、言ったら、それがなくてもいいものを敢えてやる会社ってほとんどなくなってきていますよね 。一定以上の規模の会社でそれをやり続けてるのって、はてなとかペパボとか、あと何社かくらいじゃないですか 。そういう意味ではみんな仲間みたいなものだから、みんなで少しずつでも出していきたいですよね 。

id:onishi インターネットを使って何か別のものを便利にするとか、みたいなものももちろん素晴らしいですが、その中で、ペパボさんやはてななどの会社は、表現に関するインターネットサービスをしつこく続けてきてますからね。これからも頑張っていきましょう !

id:antipopさん、ありがとうございました!


id:antipopさんこと栗林さん、ご協力ありがとうございました。次回の「はてな卒業生訪問企画」は2025年9月頃更新予定、担当はid:motemenです。