認定スクラムマスター研修で獲得した知識をチームに還元できている話

こんにちは。Webアプリケーションエンジニアの“すてにゃん”こと id:stefafafan です。私は2021年7月に認定スクラムマスターの資格を取得し、現在はその知識をチームの仕事に活かしています。

はてなにおけるスクラムの取り組みとしては、この開発ブログで id:shimobayashi が紹介した「すくすく開発会」や「プロジェクトテンプレート講義」があります。

はてなの開発プロセスを改善する、すくすく開発会とプロジェクトテンプレート講義のご紹介 - Hatena Developer Blog

今回は、その延長として社外で認定スクラムマスター研修を受講し、スクラムのまとまった知識を学んで社内に展開したことや、今後やりたいことなどをお話します。

プロジェクト運営の前提知識がない問題に直面

私は新卒ではてなに入社し、MackerelチームやマンガチームでWebアプリケーションエンジニアとして働いています。ここまで主にプログラミングする人としてやってきましたが、直近ではコードを書くことだけでなく、タスク管理やチームでうまく仕事を進める方法について悩むようになりました。

そこで前述の「すくすく開発会」が主催する「プロジェクトテンプレート講義」にも参加し、インセプションデッキの使い方を教わったりもしました。講義は有意義でしたが、自分にはもっと前提となる知識が必要だと感じました。

社内の講義で共有されたプロジェクトテンプレートは、スクラムやPMBOKの要素をもとにはてな独自で作られたもので、そもそもこのテンプレート内で活用されているスクラムの用語を私は十分に理解していませんでした。また、このテンプレートを使うとなぜ上手くいくのか、その裏側の理論を知りたいとも思いました。

さらに、このテンプレートはそのままであらゆる問題に使えるというものでもなく、チームの問題に合わせて独自にアレンジを加えられると良いかもしれないと思いました。しかし自分にその知識がないため、自チームに向けた進め方を考えたり主導したりはできないと感じました。

例えば、私が所属しているチームでは現状で2つのプロダクトを見ており、その2つをどのように同時に進めるかで直近は悩んでいましたが、プロジェクトテンプレートは1つのプロダクトの立ち上げにフォーカスしているように思えたため、そのままでは使いづらかったという背景もあります。

そういった理由から、認定スクラムマスター研修を受けることを決意しました。もとになるスクラムの知識を身に付ければ、今後のチーム改善や、すくすく開発会を経由したほかのメンバーとの知見共有もしやすくなると判断したためです。

認定スクラムマスター研修を受講することにした

スクラムについて学ぶには、関連書籍を読んで独習したり、詳しいメンバーに教えてもらうといった形もあります。ただ今回は、すくすく開発会のメンバーの何名かがすでにスクラムマスターの資格を取得しており、またその費用も会社から出してもらえるというので、スクラムマスターの研修を受けることにしました。

スクラムの認定制度にはいくつか種類がありますが、はてな社内で何人かのメンバーが取得しているのはScrum Alliance®のCertified ScrumMaster®(CSM、認定スクラムマスター)であることから、こちらの研修を受けました。

認定スクラムマスター - アジャイル ビジネス インスティテュート株式会社

私が参加した認定スクラムマスター研修は、リモート開催でした。ビデオ会議システムのZoomと、バーチャルホワイトボードツールのmiroを使っており、miro上にはスクラムイベントの紹介や、参加者が実際に手を動かしてロールプレイで学べるコンテンツがありました。

参加者同士でスクラムチームを組んで、「プロダクトオーナー」「スクラムマスター」「デベロッパー」の役割をローテーションしながら、簡単な作業をこなしたりもしました。休憩時間には講師に個別で質問することもでき、私は自分のチームが直面している話題についてアイデアをもらったりしました。

2日間の研修を受講したあとに認定スクラムマスターの試験を受け、私は無事にCSMとして認定されました。

結論を言うと、研修を受けて資格を取得することは、スクラムの学習に最適だと思います。知識は大幅に身に付き、スクラムがなぜ効果的なのか、プロジェクトテンプレートがなぜあのように構成されているのかが理解できるようになりました。すくすく開発会の定例でも、より会話に入れるようになりました。

研修を受けて分かったことや自分が変われたこと

研修を受けたことで、狙い通りスクラムの知識は身に付き、スクラム関連の情報のインプットもしやすくなりました。

例えば、スクラムとはミニマルなフレームワークであって、スプリントの単位で改善のサイクルを回すことが本質であることや、長いスパンの計画はスクラムのイベントと別に考えるとよいことが分かりました。これは個人ブログにも書いています。

研修受ける前には、どうしてもスクラムの用語に引っ張られ、かっちりとしたフォーマットに沿って進めなければいけないのかと思っていましたが、重要なのは改善のサイクルを回すことで、チームごと細かくアレンジしてもよいことが分かりました。

また、スクラムガイドもすんなり読めるようになり、過去のバージョンと最新版との差分を眺めて、その意図などが理解できるようになりました。記事執筆時の最新である「スクラムガイド2020」はこれまでよりページ数が減っており、ソフトウェア開発に限らずさまざまなチームを意識してミニマルに押さえていることが伺えます。

同様に、社内のプロジェクトテンプレートに使われている用語と、スクラムの概念の差分が理解できるようになりました。社内で作られたプロジェクトテンプレートには、スプリントよりも大きな枠組みである「プロジェクト立ち上げフェーズ」「プロジェクト計画フェーズ」のことが書かれていました。

その上で、スクラムの用語があちこちに散りばめられており、研修を受ける前は読みながら定義を確認したり、なぜ特定の会議は特定のロールの人が参加するとよいのかなどを考える必要がありました。ですが知識が身に付いた今では、不要になりました。

プロジェクトテンプレートは、名前の通りプロジェクトを1から立ち上げるときなどにはそのまま使えそうですが、チーム全体として仕事の進め方をどうするか考えたいときなどには限定的過ぎて、そのままではやはり使いづらいという結論にいたりました。

スクラムマスターとして業務で果たした役割と改善

私は認定スクラムマスターとして資格を取得したので、自分の発言に自信を持って、仕事の進め方の改善をメンバーに提案できるようになりました。その結果、現在ではスクラムマスター兼Webアプリケーションエンジニアとして、チームにスクラムの導入を進めています。

理想的には、1つのチームで1つのプロダクト(つまり共通のゴール)に向けてタスクをこなすことではあります。しかし前述の通り、私のチームでは2つのプロダクトを同時に見ているので、そのあたりを気にかけつつ、改善のサイクルを回せるようにする必要があります。

例えば、タスクはそれぞれのプロダクトで個別に管理していましたが、スプリントごとに終えるべきタスクを一覧して確認できるように、チーム共通のカンバンを新設して、整理しました。私が一人で勝手に整理するのではなく、あくまでもサーバントリーダーであることを意識して、チームメンバーみんなで協力して一緒に整理しました。

別のプロダクトと言いつつも、ともに同じ「マンガ」系のWebサービスなので、1つのチームで一緒に見る形でもなんとかなりそうと感じています。

会議体も整理したく、すでに旧「朝会」を「デイリースクラム」の形に整理し直しました。この調子で、スプリントレビューやスプリントレトロスペクティブの導入、バックログアイテムの切り方などについて、チームメンバーと会話しながら、仕事を進めやすくしていこうと思っています。

また、チームの仕事で分かったことをすくすく開発会など含め、社内外へ知識展開できたらと考えています。

これから実践していきたいこと

すくすく開発会では以前から、興味ある人に認定スクラムマスター研修への参加を推奨していました。実際、今期は私のほかに id:maku693id:polamjag もCSMとして認定されました。社内で新たに3人のスクラムマスターが誕生したことになります。

資格を取得して以降、チームの改善についてより整理しやすくなった上、すくすく開発会の定例でも会話がしやすくなったので、他の興味がありそうなメンバーにもオススメしようと思いました。

社内にいるメンバーだけで定例を進めていくと、どうしても社内の事例や知識に依存したものになってしまうので、社外の研修や勉強会の知見を定期的に持ち帰って展開することが大事です。逆にこのエントリのように社内の事例を社外へと発信することも進めていきたいです。

ここまで、はてなのすくすく開発会で受講が推奨されている「認定スクラムマスター研修」を受けて学んだことについて紹介しました。

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